喰らいつく狼の群れ

本を読んで考えたことを書きます

スゴ本の読み方―Dain「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」

「あとで読む」はあとで読まない。本書の帯に大きな字で書かれている。ドキッとして本書を読んでみたところ、これにはどうやら、要約すると、

ネット書店のレビューや本屋のPOPを見て、運命的な出会いを直感して本を買ったはいいものの、部屋で読み始めるとどうにも違和感がある。まあいいか、あとで読もう。こうなると、だいたいあとで読まない。本も商品なのだから、レビューやPOPが魅力的に見えるのは当たり前だし、運命的な出会いは稀である。図書館を活用しなさい。

という文脈があるようだ。一般に「あとで読む」は罪だ、と主張しているわけではないのだ。よかった。私は怠惰なので「あとで読む」だらけだ。図書館にもあまり通えてない。ごめんなさい。

 

わたしが知らないスゴ本は、 きっとあなたが読んでいる

わたしが知らないスゴ本は、 きっとあなたが読んでいる

  • 作者:Dain
  • 発売日: 2020/04/30
  • メディア: Kindle版
 

 

著者のブログ「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」におけるスゴ本の書評にはいつもお世話になっているが、本書では「スゴ本の読み方」についてもまるごと一章が割かれている。

本を読むからには私はできるだけ良い読み手でありたい。そう願うのはおそらくふつうのことだが、簡単なことではなさそうだ。アドラーの『本を読む本』はずいぶん前に買ったが、ウンザリして途中でやめた気がする。そして結局それ以来一度も読んでいない。

悩みのあるところにスゴ本があるのは、必然なのだろうか。「どのように本を読むか」、「なぜ本を読むのか」、「そもそも読むとは何か」。先人は本に残してくれている。えらい。それを紹介してくれる著者もえらい。ありがとう。アドラー以外にも、いろんなタイプの良い読み手がいるのだ*1

「あとで読む」と思ったものがたくさんあったので、自分用のメモとして、以下に書名のリストだけ挙げる。本当に「あとで読む」かは分からない。

  • ダニエル・ペナック著、浜名優美、浜名エレーヌ、木村宣子訳、『ペナック先生の愉快な読書法』、藤原書店
  • 司馬遼太郎、『峠』、新潮社
  • ウラジミール・ナボコフ著、行方明夫訳『ナボコフのドン・キホーテ講義』、昭文社
  • ピエール・バイヤール著、大浦康介訳、『読んでない本について堂々と語る方法』、筑摩書房
  • 佐藤亜紀、『小説のストラテジー』、筑摩書房
  • 廣野由美子、『批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義』、中公新書
  • デイヴィット・ロッジ著、柴田元幸、斎藤兆治訳、『小説の技巧』、白水社
  • 日本経済新聞社編、『半歩遅れの読書術〈1〉私のとっておきの愉しみかた』、日本経済新聞出版
  • ロジャ・シャルチエ著、福井憲彦訳、『読書の文化史―テクスト・書物・読解』、新曜社
  • アルベルト・マングェル著、野中邦子訳、『読書礼賛』、白水社
  • アルベルト・マングェル著、原田範行訳、『読書の歴史』、柏書房
  • アルベルト・マングェル著、野中邦子訳、『図書館 愛書家の楽園』、白水社
  • デヴィッド・L・ユーリン著、井上里訳、『それでも、読書をやめない理由』、柏書房

*1:アドラーの『本を読む本』のやり方は、知識を求めるには有効だが、楽しみを求めるには向いていない、と本書に書かれていて、なんとなく溜飲が下がった。